第1回 新聞離れが止まらない
岸尾祐二の部屋では「日本のNIE原点における風景を探る」を執筆しています。ここでのNIE原点は1985年~2000年までの15年間です。メディアを取り巻く状況は2000年ぐらいから大きな変化が起こってきたと考えられます。私の執筆の意図は、「NIEの原点と現在のNIEとの対話を図る」ことにあります。それで、少しずつでも現在のメディアやNIEの状況を私が理解している範囲で「雑感」として書き記しておこうと思ったのです。
「雑感」とは雑多な感想、まとまりのない思いついたままの感想、とりとめのない感想などとされています。新聞などでは、記者がニュース対象から感じた印象や周りの状況、関係者の反応などを記事にしたものとされています。いずれにしても「雑感」はそれほど明確な根拠を問うことではないようなので、ちょっと一息して気軽に書いていこうと思います。
第1回は新聞発行部数の大減少、いわゆる新聞離れの現象です。
日本の新聞発行部数のピークは1997年でしょうか。私が書き進めている「日本のNIE原点の時期」の終わりごろに当たります。1997年に一般紙とスポーツ紙を合わせた部数が約5377万部でした。それが、2023年には約2859万部に減少してしまいました。2518万部の減少です。26年間で約47%の減少と言うことになります。私が勤めていた私立小学校で47%受験者が減少したらこれは学校にとって見通しが全くたたない状況になります。
どうしてこのような減少(現象)が起こったのでしょうか。よく相関関係は掴めても原因が明確でないことがあります。このケースも原因は掴めているのでしょうか。「新聞に対する信頼が低下した」「新聞記者の取材力が落ちた」「新聞が面白くない」「新聞社の経営力が旧態依然としたもので合理的でない」「ネット社会での情報の方が早く理解もしやすい」「一覧性がかえって邪魔でネットで気になった情報が簡潔でわかりやすい」「テレビのニュースや解説で十分間に合う」「新聞代が高い」「読み終わった後の処理が面倒だ」「旅行に出かける時に取り置きなどの依頼が面倒」「紙の消費が無駄である」「新聞から情報を得るなんて今時遅れている」「新聞を理解する読解力がない」「真剣に読みたい記事がない」もっといろいろな意見が聞こえてきそうです。
2008年から『朝日ジュニア学習年鑑』の一部の執筆を担っていますが、「情報」のページに毎年「日本の新聞の販売部数」が記載されています。発行部数と販売部数ではカウントの仕方が異なると思いますが大きな数字の差はないと思います。2024年版(データは2023年11月)での数字は以下です。1997年のピーク時に、読売新聞は1000万部、朝日新聞は800万部を超えていたのですが。どの新聞社も部数は減らしています。販売部数が多い順になっています。【資料】日本ABC協会
読売新聞 613万部、 朝日新聞 353万部、中日新聞 177万部、毎日新聞 160万部、
日本経済新聞 141万部、産経新聞 89万部、北海道新聞 80万部、中国新聞 50万部、
静岡新聞 48万部、信濃毎日新聞 39万部、河北新報 38万部、西日本新聞 37万部、
東京新聞 37万部、新潟日報 36万部、北國新聞 31万部、京都新聞 31万部、
山陽新聞 31万部、下野新聞 27万部、上毛新聞 25万部、南日本新聞 24万部、
熊本日日新聞 23万部、福島民報 21万部、北日本新聞 20万部、秋田魁新報 19万部、
東奥日報 18万部、山形新聞 18万部、愛媛新聞 18万部、岩手日報 17万部、
徳島新聞 17万部、山梨日日新聞 16万部、山陰中央新報 16万部、福井新聞 16万部、
宮崎日日新聞 16万部、大分合同新聞 16万部、四国新聞 15万部、福島民友 15万部、
日本海新聞 14万部、高知新聞 14万部、神奈川新聞 13万部、沖縄タイムス 13万部、
琉球新報 13万部 岐阜新聞 12万部、佐賀新聞 12万部、茨城新聞 12万部、
デーリー東北 9万部、北陸中日新聞 7万部、
過去の『朝日ジュニア学習年鑑』の「情報」コーナーを見てみれば販売部数減は明確です。なぜ新聞離れがこれほど進んだのか、子どもたちが考えるプロジェクトをつくってもいいのではないでしょうか。