第5回 日本新聞協会NIEホームページを探るⅠ「NIEニュース」⑤主権者教育にどう取り組むか
NIEニュース92号(2018年11月15日発行)
https://nie.jp/publication/pdf/ver_92.pdf
【フロントページ】
まず、特集「『良き市民』を育てるNIE」寄稿の意図が書かれています。
「選挙権年齢の引き下げに続き、2022年4月から成年年齢が18歳に引き下げられる。多くが高校在学中に成人になり、選挙権を得ることになる。学校教育を通じて主権者としての自覚を深め、社会に主体的に参画する資質・能力を育成するのに新聞はどのような役割を果たせるのか。さまざまな立場からご寄稿いただいた。」
政治解説者・文部科学省「主権者教育推進会議」座長 篠原文也氏
「主権者教育そのものを学校現場で展開することには、強い抵抗があり、文科省は『教育基本振興計画』に『主権者教育』の言葉を入れること自体も嫌がった。」とあります。政府は主権者教育を積極的に推進する意向ではないことが伺えます。当時の政権は安倍晋三氏が担っていました。
「参院選時(2016年)の18歳の投票率は、51.28%でまずまずだったが、衝撃だったのは昨年(2017年)の衆院選時の19歳の投票率が33.25%しかなかったことだ。」ということから「にわか仕込みの主権者教育では本当の主権者意識は身につかないことを実感させられた。」とあります。
今後、次の3点で議論を進めることが書かれています。
「一つは主権者教育を幅広く捉え、選挙教育はあくまでその出口に位置付けることだ。社会に関心を持たせ、公共心を養うのが主権者教育の最大の眼目であり、そのための推進策にもっと力を入れる必要がある。」
「二つ目は小中学生の頃から主権者教育を始めるべきだという点である。」
「三点目は家庭の役割。子供を投票所に連れて行ったり、世の中の出来事について家族で語り合ったりすることは、子供の主権者意識を育むのに大いに役立つ。」
真っ当な意見と言えますが、すでに私は2016年6月には、当時の東洋館出版編集部長の川田龍哉にご理解を頂き、上智大学の田中治彦氏、明治大学の藤井剛氏、毎日新聞の城島徹氏、広尾学園の町田貴弘氏と一緒に、毎日新聞の小島明日奈氏・五十嵐英美氏の協力を頂き『やさしい主権者教育 18歳選挙権へのパスポート』(東洋館出版、2016年6月)を発行しています。
篠原文也氏が今後の議論とされた3つの視点をすべて含めての「主権者教育」を提起した出版物になっていました。

【2~3頁】
「大人になる“構え”をつくる」
神奈川県立瀬谷西高等学校教諭 黒崎洋介氏
「これからの学校教育には『18歳の段階で何ができるようになるか』という視点に立ち、『公教育』としての本来的役割を回復することが求められる。つまり、公的領域への参加を促すシティズンシップ教育(主権者教育)、私的領域への参加を促すキャリア教育を、学校の教育の理念として掲げ、生徒が大人になる“構え”をつくることを保障していかなければならない。」
「こうした『キャリア・シティズンシップ教育』の理念を具体化させる方策が『学びの意味』を明確にした授業づくりである。」
「現実世界に存在する本物の社会的実践に可能な限り文脈や状況を近づけた教材を使用することが欠かせ実社会や実生活に即して学ぶため、生徒にとって『学びの意味』が実感しやすくなる。こうした『真正の学び』においては、学校教育と実社会や実生活を繋ぐインターフェースとして新聞が有効である。」
「大人になる“構え”」をつくるために、「キャリア・シティズンシップ教育」が必要とし、その具体的な方策が「『学びの意味』を明確にした授業づくり」で、そのために「学校教育と実社会や実生活を繋ぐインターフェースとしての新聞」が有効であることを主張されています。
極めて論理的に主権者教育の位置づけを書かれていた教育実践者の寄稿文であったと思いました。