第21回 日本新聞協会編「NIEニュース」第3号(1995年3月)発行
【1~3頁】
「座談会『情報教育と新聞』」
掲載の意図は「文部省が情報教育の重要性を強調して10年以上が経過しましたが、教育現場では、情報教育をコンピューター教育ととらえがちです。そこで、文部省視学官として情報教育を推進した柿沼先生から情報教育の位置づけをうかがうとともに、『情報活用能力』とは何か、NIEは情報活用能力の育成にどのような貢献ができるのか-などについて教育現場、新聞社それぞれの立場から話し合っていただきました。」
出席者は、柿沼利明氏(埼玉大学教授・元文部省視学官)、鹿野川喜代美氏(東京昭島市立瑞雲中学校教諭)、岸尾祐二(聖心女子学院初等科教諭)、原田新司氏(新潟日報社代表取締役専務)で、司会は山岸駿介氏(朝日新聞東京本社編集委員)でした。
進行項目ごとに私の発言を提示します。
情報教育は何を目指すのか
山岸氏「文部省は21世紀の教育においても情報教育を重く位置付けているが、情報教育はコンピューター教育ととらえがちだ。そもそも情報教育は何を目指したものだろうか。」
岸尾「本校には現在、コンピューターは入っていないが、学校教育に導入していかないといけないだろう。今後、情報教育の中でコンピューターは大きな役割を果たすだろうが、柿沼先生から指摘のあった間接経験の肥大化や活字離れは、情報教育を考えるうえで検討すべき課題といえる。」(聖心女子学院初等科には基本ソフトWindows98のデスクトップパソコンが1998年二人に一台分コンピュータールームに設置されインターネット環境が整えられました)
NIEと情報活用能力の育成
山岸氏「情報を異なる視点からみるのはたいへん難しいことだ。NIEでは、どのようにその能力を育成できるだろうか。」
岸尾「新潟県の教育委員会が文字、映像、コンピューターを取り上げたのは賢明で、この3つを総合的に進めることはよいことだ。子どもたちは、よい悪いは別としてテレビが好きだ。そこから学習に入ることもできるので、全く無視はできない。また、コンピューターも各家庭に普及してきており、子どもたちは上手にマウスを使いこなす。映像、コンピューターは人気があるが、活動は一番人気がない。しかし、学校の役割はこうした映像や新聞をどうみるかを教えることだ。アメリカでは、新聞の読み方をしっかり教え基礎を固めている。教育ではそうしたことが大切なのだが、日本ではそのような実践が少ないのが現状だ。」
山岸氏「小学生に新聞を親しませるのは苦心が多いと思うが、新聞の読ませ方について工夫があるのか。」
岸尾「低学年は文字が読めないので写真を使う。オリンピックなどのイベントがあれば、カラー写真から世界にはいろいろな人種、建物、自然があることが分かる。写真から入ることでもけっこう関心を持つものだ。高学年では、切り抜きはしないで新聞一部を渡してしまう。子どもの自由な関心を重視して、楽しく、強制しないことを第一にしている。何に関心があるかを話し合うことで、人間的なふれあいもでてくる。また、新聞とテレビを比較することで、そのメディアの特性を学ぶ。おわびや訂正をみて、新聞、テレビにも間違いがあることを理解させたり、新聞を読み比べたりも10年ほど前から行っている。すべての児童が興味・関心をもつわけではないが、関心をもった子どもは新聞を読むようになる。」
山岸氏「切り抜きノート以外に新聞をどのように活用しているのか。」
岸尾「教師の提示だけでなく、子ども自身が情報を切り取れるようにしてあげるのが教育の役割。基本的な新聞の読み方を習得させたら、新聞記事からテーマや材料を探してディベートを授業に取り入れる。教師がきっかけをつくることが大切だ。新聞を読んだけれども、それが本当なのか実際に出かけて見に行って、検証することも大切だ。」
新聞への注文
山岸氏「NIEのために新聞を作っているわけではないが、新聞に対する注文は。」
岸尾「子ども向け新聞をつくるのは本来の新聞の役割ではない。ただし、大学生など若い人にとって、分かりやすく魅力的な新聞をつくってもらいたい。」
【4~5頁】
「教育関係者米国事情視察団 ひとこと感想集」
教師を対象にした外国NIE視察の第1回の感想でした。
「新聞協会は3月26日4月2日の8日間にわたって、小、中、高校の教師18人による『教育関係者米国NIE事情視察団』を派遣した。NIEパイロット計画を実践した先生方の、『NIEの本場、米国の教育現場をぜひ見たい』という希望が実現したもので、参加した先生方からは、改めてNIEの必要性やすばらしさを実感する声が寄せられた。ここでは先生方一人ひとりの感想を紹介する。」
私は次のような「ひとこと感想」を書きました。
「米国NIEの実践で強く感じたのは、柔軟な発想で多様な実践が展開されていることだ。①新聞の読み方の学習②時事問題の学習③討論の学習④識字教育としての学習⑤クラスに溶け込まめない子どものための学習、などなど。この柔軟で多様な実践こそ、日本のNIEでいま求められているのではないか。」
【6~7頁】
「1995年度NIEパイロット計画 実践者決定へ」
「各地のNIE推進組織の動き」
長岡セミナー開かれる
東京でシンポジウム開催
【8頁】
「実践報告書が完成」
「1994年度の『NIEパイロット計画』および東京、大阪、新潟3地区の『研究助成』でNIE授業を実践した先生方の実践記録である『1994年度NIE実践報告書』がこのほど完成した。」
「欧州NIE事情視察団を派遣」
「子どもの権利をテーマに9月14、15の両日、スウェーデン・ストックホルムで『国際NIE大会』(国際新聞発行者協会=FIEJ主催)が開催される。同大会では、シンポジウム、ワークショップ、見学会などが行われるほか、大会のために募集した子どものメッセージを発表する。新聞協会では9月12日から22日まで、大会に参加するとともに欧州各地のNIE事情を視察するため、『欧州NIE事情視察団』を派遣する。」
新聞界のNIE事情視察団に私も参加させて頂き、「国際NIE大会」への参加とスウェーデン・ノルウェー・イギリスのNIE事情を視察させて頂きました。このレポートは「NIEニュース」第4号でご紹介致します。
NIE日誌(1995年4月~1995年6月)
編集後記
(社)日本新聞協会とは