第48回 第1期(1985年~1994年)新聞界のNIE0からの出発
第1期(1985年~1994年)の考察
1985年10月 静岡市で開催された日本新聞協会新聞大会で新聞界がNIEを提唱する
その後時系列に1985年~1994年の以下の資料を提示
(1)日本新聞協会『ご存じですか NIE NEWSPAPER IN EUCATION』1987年4月。
(2)東京NIE推進委員会『NIE-教育に新聞を 東京NIE推進員会研究報告書 1989年度』1990年6月。
(3)日本新聞協会『私は「新聞」です。1』1990年11月。
(4)東京NIE推進委員会『NIE-教育に新聞を 東京NIE推進員会研究報告書 1990年度』1991年6月。
(5)日本新聞協会『私は「新聞」です。2』1991年10月。
(6)日本新聞協会『私は「新聞」です。3』1992年3月。
(7)東京NIE推進委員会『NIE-教育に新聞を 東京NIE推進員会研究報告書』1991年度 1992年6月。
(8)日本新聞協会NIE委員会編『新聞で遊ぼう 考えよう NIE実践事例集・小学校編』1993年1月。
(9)日本新聞協会NIE委員会編パンフレット『いきいき学習 NIE教育に新聞を Newspaper in education』1993年5月。
(10)東京NIE推進委員会『NIE-教育に新聞を 東京NIE推進員会研究報告書』1992年度 1993年6月。
(11)東京NIE推進委員会『NIE-教育に新聞を 東京NIE推進員会研究報告書 1993年度』 1994年7月。
1985年10月 静岡市で開催された日本新聞協会新聞大会で新聞界がNIEを提唱された時、どのような見通しがあったのでしょうか。当時、新聞界は教育界の問題点を鋭く紙面で追究していました。NIEは新聞界と教育界の協力的な活動です。教育界には多くの反対もあったことでしょう。NIEを新聞の販促の一手段と捉える見方もあったようです。
NIEという言葉を全国に広める役割を果たしたのは、『ご存じですか NIE NEWSPAPER IN EUCATION』(日本新聞協会、1987年4月発行)という冊子でした。
私はこの冊子から次のことをよみ取りました。
①NIEの始まりは米国で、欧州の国々でも取り組まれている。
②各国の新聞協会や財団、新聞各社が積極的に取り組んできている。
③各国の新聞協会、財団、新聞各社ではNIEの専門性がある人材を配置し、教育界との協力体制を築いている。教師向けのマニュアルや子ども向けのNIE特集のような紙面を提供している。
④新聞の切り抜きではなく新聞を丸ごと教室で活用している。
⑤日本では茨城大学附属中学校での授業がNIEのモデルになる。
この冊子作成に大きな役割を果たしたのが、妹尾彰氏(日本新聞協会NIE専門部会会長)でした。その後妹尾氏のNIE活動への貢献は多大なものがありました。
その後、組織づくりはどのように進んだでしょうか。
1988年 日本新聞協会NIE委員会設置
1989年 東京NIE推進委員会設置
東京都小学校新聞教育研究会協力
東京都中学校新聞教育研究会協力
1990年 東京NIE推進委員会研究報告書発行
まずは東京で始まったことが分かります。教育界との関係では東京都小学校新聞教育研究会、東京都中学校新聞教育研究会と協力的な関係を築き、パイロットプランという研究的な授業研究を推進しました。私は新聞教育研究会という組織があるのも知りませんでしたし研究会に参加することはありませんでした。日本新聞協会が東京NIE推進委員会を組織し、新聞教育研究会と協力的な関係をもったことはNIEを教育界に広げる入口としては成功したと考えます。
1990年発行の『東京NIE推進委員会研究報告書 1989年度』は実に緻密な構成になっていました。これは、東京都小学校新聞教育研究会と東京都中学校新聞教育研究会の協力があってできたものでした。この報告書は後の各都道府県に設立された「NIE推進協議会」で発行された研究報告書で参考にされたと思われます。第1期では引き続き、『東京NIE推進委員会研究報告書 1990年度』(1991年発行)、『東京NIE推進委員会研究報告書 1991年度』(1992年発行)、『東京NIE推進委員会研究報告書 1992年度』(1993年発行)、『東京NIE推進委員会研究報告書 1993年度』(1994年発行)4冊発行していました。
その過程で、小学校部会では東京都小学校新聞教育研究会の公立小学校の先生方だけでなく、1991年1月東京都私立小学校社会科研究会の私立小学校の先生方が参加、2月東京学芸大学附属小学校NIE研究会が参加するようになりました。国立・公立・私立の各研究グループが組織としてNIEに参加するという教育界では貴重な場面がつくられました。研究報告書1990年度から93年度まで国立・私立の実践が掲載されています。
日本新聞協会NIE専門部会(編集担当者で構成)では、NIEを実践する先生方に新聞を理解してもらう試みとして『私は「新聞」です。1』(1990年11月発行)、『私は「新聞」です。2』(1991年10月)、『私は「新聞」です。3』(1992年3月発行)を発行しました。このガイドブックは非常に丁寧に新聞について解説していました。NIEの前提になる新聞理解を促すものでした。この試みは先生方に大きな役割を果たしました。
その後、1993年1月日本新聞協会NIE委員会編『新聞で遊ぼう 考えよう NIE実践事例集・小学校編』が発行されました。小学校向きの実践事例集でした。ここでは、宮城県、茨城県、栃木県、東京都、神奈川県、京都府、兵庫県の11名の先生方が執筆しています。東京を起点にしたNIEが6つの府県に波及していることが分かります。1992年以前にNIEを意識した実践が行われていたのです。
さらに、1993年5月日本新聞協会NIE委員会編パンフレット『いきいき学習 NIE教育に新聞をNewspaper in education』が発行されました。ここでも日本各地でのNIE実践が簡潔に紹介されていました。
第1期では従来の新聞の切り抜きを授業に活用してきた日本の実践から、新聞を丸ごと活用する欧米型のNIE実践に目を向けるための新聞界の模索と貢献について考察しました。私は個人的にその過程に触れることができ、新聞界の努力には本当に驚き感謝していました。この「0からの出発」本当に頭が下がりました。