第5回 東京NIE推進委員会『NIE-教育に新聞を 東京NIE推進員会研究報告書 1989年度』(1990年6月)の発行
日本新聞協会『ご存じですか NIE NEWSPAPER IN EUCATION』(1987年発行)発行から、日本新聞協会ではどのようにNIEを推進してきたのでしょうか。東京NIE推進委員会の研究報告書の冒頭で、日本新聞協会NIE委員会委員長、一力一夫氏(河北新報社会長)は次のように書かれています。
「1988年2月、当協会はNIEに取り組むための専門機関としてNIE委員会を設置した。その翌年の89年5月末には、東京NIE委員会が発足した。東京の小学校と中学校の両新聞教育研究会と当協会NIE委員会の協力でできたのもので、同年9月には意欲的な試みが始まった。個人的な感想で恐縮だが、予想を超える早い進展に驚いたことを覚えている。今期の目標は実践(パイロットプラン)を通じて、その意義と可能性を確かめ、次年度以降の本格的な研究推進のための課題を把握することに置かれた。」
「あとがき」で日本新聞協会NIEコーディネーターの妹尾彰氏も次のように書かれています。「新聞界と教育界がNIEを話し始めて4年がたった。その間、東京でNIEに関する研究推進を図るため、東京都中学校新聞研究会・同小学校新聞教育研究会とともに、89年5月、東京NIE推進員会が設立された。同委員会では本格的なパイロットプランに先立って、急きょ予備的なパイロットプランを実施することが決まり、委員各位は精力的に調査・研究・公開授業等に取り組んだ。
先生方には授業後の夕刻から新聞協会にお集まりいただいたのだが、夜遅くまで熱心な討議が続き、頭の下がる思いだった。公開授業を行った東久留米市立第九小学校・竹泉稔教諭、持田浩志教諭、江東区立第二亀戸中学校・阿部峰子教諭、西村幸江教諭、江戸川区立篠崎台第二中学校・小林豊茂教諭には、特に心から感謝の言葉を申し上げたい。
予備的パイロットプランは短期間かつ小規模にもかかわらず、大きな成果をあげることができた。報告書で各委員が指摘されているように、今後の課題を含めてわが国NIEの促進へ貴重な一石となることを確信している。」
1987年 日本新聞協会『ご存じですか NIE NEWSPAPER IN EUCATION』発行
1988年 日本新聞協会NIE委員会設置
1989年 東京NIE推進委員会設置
東京都小学校新聞教育研究会協力
東京都中学校新聞教育研究会協力
1990年 東京NIE推進委員会研究報告書発行
このようなNIEに取り組む組織と報告書発行の推移になるのでしょうか。
研究報告書の目次をみるとかなり緻密な構成になっていることが分かります。
1.東京NIE推進員会の活動
2.小学校におけるNIE
3.NIEはこの視点で
4.新聞と教育―新聞の教育的指名―
5.ことばの教育を
6.小学校におけるNIE研究の方向
7.小学校の社会科における実践
〈参考〉授業や学級経営に生かす
8.公開授業・研究協議の記録(小学校)
9.実践に関する考察
10. 中学校におけるNIE
11. 中学校におけるNIE研究の方向
12. 学校への新聞配置
13. オリエンテーションを実施して
14. 国語、学級会活動への利用
15. 社会科での利用
16. 公開授業・研究協議の記録(中学校)
17. 現代中学生の新聞接触
18. 実践に関する考察
19. 全体のまとめ
この緻密な構成は、東京NIE推進委員会に東京都小学校新聞教育研究会と東京都中学校新聞教育研究会が協力する体制が敷かれたことによるものと思われます。
1990年に私は研究報告書を手にしました。その時最も関心があったのは「公開授業・研究協議の記録(小学校)」と「公開授業・研究協議の記録(中学校)」でした。
小学校の公開授業は5年生社会科での「ヒョウによる農業被害」で、8月28日に起こった東村山市でのヒョウによる農作物被害やけが人、停電被害などの新聞の切り抜きを効果的に活用したものでした。
中学校の公開授業は2年生の2クラスで行われました。A組は国語の授業で「新聞でことばを学ぶ-新聞を活用した熟語・文法の指導」でした。班ごとに新聞から用語を探し(15~20分)、みんなで活用法を考えるもので、教師と生徒が対話する展開でした。B組は学級活動で「新聞で遊ぶ-新聞を活用した学級活動」で、国名・地名探しをしました。各自新聞から国名・地名を25分ぐらい探して、見つけたらB4版のワークシートに「第なん面か」「どこで(国名)」「内容」「記事に出ている国名・地名」を記入させるものでした。
ここに新聞界と教育界の協力的な教育活動がスタートしたのでした。
この研究報告書にお名前が出ている方と後に私は一緒にNIEに関わっていくのでした。
吉成勝好氏(中野区立野方小学校)、持田浩志氏(東久留米市立第九小学校)、竹泉稔氏(東久留米市立第九小学校)、野口元氏(毎日新聞編集委員、第一専門部会長)、河辺和夫氏(朝日新聞ニューメディア本部副本部長、第二専門部会長)