第7回 私のNIE起点になる授業 5年生「新聞と友だちになろうPART1」(1989年)6年生「新聞と友だちになろうPART2」(1990年)
5年生「新聞と友だちになろうPART1」(1989年)
日本新聞協会がNIEを本格的に推進するために、東京NIE推進委員会を設置し、そこで東京都小学校新聞研究会と東京都中学校新聞研究会の協力を得てパイロットプランを実施していました。それが、1989年のことでした(日本のNIE原点における風景を探る(5)を参照して下さい)。
私は東京都小学校新聞研究会に所属はしていませんでしたので、東京NIE推進委員会やパイロットプランのことは詳しく知りませんでした。日本新聞協会『ご存じですか NIE NEWSPAPER IN EUCATION』(1987年発行)を熟読し、どのようなNIEが可能なのか自分なりに考えていました。
1989年5年生を担任することになり、それまでのNIEに関する知識や学習内容・方法を駆使して新聞を活用した23時間の学習を計画し実践しました。その実践「新聞と友だちになろう」が私のNIEの起点になりライフワークの1つとして現在でも実践・研究をしています。今回の実践については、当時の東京都NIE推進委員会の1990年度(平成2年度)の研究報告書に「国際理解教育を深めるために―新聞の読み方を学ばせながら国際理解を図る―」を執筆しました。ライフワークの1つであるNIEの起点になる授業をご紹介致します。
私はNIEがただ新聞を読んで内容を理解するだけではなく、メディアリテラシーとしてのNIEを心がけました。メディアリテラシーとはメディアが発信する情報を評価し批判的に理解する能力と共にメディアを使いこなす技能を身につけることと捉えて小学校なりの実践と研究に取り組んできました。当時メディアリテラシーという言葉や意味について十分理解していたかは定かではありませんが。
今回紹介する「新聞と友だちになろう」の第1時が「新聞にも誤りがある」で、1989年に起こった「サンゴ事件」「グリコ事件」「宮崎勤アジト事件」を取り上げ、作られた記事や誤報があることを考えていました。
1)研究課題
日本でも新聞を授業で活用する実践は行われてきています。しかし、その実践の多くは新聞の切り抜きを教師が子どもに提示するという形でした。そのような実践は教育的に十分意味を持ちえますが、NIEを推進している諸外国の実践は新聞をまるごと教室に持ち込むものです。そこには、教師の一方的な提示だけでなく子どもたちが自らの判断により選択した記事により学習が進むという可能性を含むものです。そのことにより情報化・国際化時代に対応し、主体的に生きていける子どもが育っていく1つの契機になるのではないかと考えています。また、新聞を提示はしますがその読ませ方については十分実践が行われてきたとは思っていません。
私は教師1年目から新聞を活用した授業は行ってきました。その成果を1988年11月に千葉大学で行われた日本教育技術学会で「小学校におけるNIEの授業Ⅰ―新聞情報と教育技術の結合を図るいくつかの試み―」というテーマで発表しました。その反省として新聞を使った教育はしていましたが、子どもたち一人ひとりに新聞を読みとる力を授業の中に位置付けてこなかったことが挙げられます。
現在、新聞の一面には毎日のように国際的な記事が掲載されています。新聞記事=国際的な記事というような状況です。当然新聞を使った教育は国際的な話題に触れざるを得ません。
本研究は2つの課題を持ちます。
1つは新聞を丸ごと教室に持ち込み、子どもたち一人ひとりが自らの判断で選んだ記事について自らの考えを持ち、その発展として新聞についての自由な研究ができるまでの研究です。新聞の読み方を学ぶにはどのような指導方法があり得るのかを課題とします。
もう1つは新聞の読み方を学ぶ過程で国際理解を図る研究です。私は小学生の国際理解教育には2つの視点が重要だと考えています。1つ目は国際的な出来事に関心を持ち世界に目を向けることです。2つ目は相手の立場を考え多様な価値観を認める姿勢をつくることです。このような2つの視点を5年生の子どもたちが新聞の読み方を学ぶ過程で考えることができるかを研究課題とするものです。
2)授業過程(23時間)
授業過程については共同代表をしている「学びの未来研究所」ホームページNIEのコーナーに「新聞と友だちになろう PART1」として載せていますのでアクセスして頂けますでしょうか。
https://www.manabinomirailab.com/nie-6
また、授業過程の「世界にいる日本人特派員に手紙でインタビュー」は
https://www.manabinomirailab.com/_files/ugd/72f8d9_6cfadd2c965248ca860103b51521972f.pdf
へアクセスして頂けますでしょうか。
さらに、授業過程の「『新聞』に関する授業研究」は
https://www.manabinomirailab.com/_files/ugd/72f8d9_185072f18c35490fa89c4be9259f8911.pdf
へアクセスして頂けますでしょうか。
3)授業の評価と今後の課題
こちらは、「授業の評価と課題」
https://www.manabinomirailab.com/_files/ugd/72f8d9_4254342bedd548ba934787f4d5b58657.pdf
へアクセスして頂けますでしょうか。
6年生「新聞と友だちになろうPART2」(1990年)
5年生から6年生の持ち上がりが分かっていた春休み中の4月1日、エイプリルフール用の記事が全国のいくつかの新聞記事に掲載されていました。私もそのニュースを知り「こんなことがあり得るのだろうか?」と疑問に感じていました。8日後、いくつかの新聞に作り話だったことが掲載されました。
6年生になって早速子どもたちが取り組んだのがこのテーマでした。子どもたちによる調査報道の取材になりました。その時の学習の様子は「新聞と友だちになろうPART2」へ
https://www.manabinomirailab.com/_files/ugd/72f8d9_bd804324ac994a7c8664f1e9e832d42e.pdf
新聞社にアンケートをとり、回答を頂きました。どの新聞社からも丁寧に応えて頂きましたが、特に中国新聞からの回答は詳細でとても感謝致しました。
この「新聞と友だちになろうPART1」(5年生)「「新聞と友だちになろうPART2」(6年生)の実践は、日本社会科教育学会第41回全国研究大会(1991.10.12信州大学)の課題研究で「NIE(Newspaper in Education)の研究Ⅰ―新聞の読み方習得過程における誤報・不確かな記事や写真・訂正等の指導の試み―」というテーマで発表しました。
1991年には小学校社会科5年教科書の2社(中教出版、帝国書院)で「新聞」が取り上げられていました。もっとも私のNIE実践は教科書に捉われてはいませんが。それが私立小学校の特徴です。