第50回 第3期(1996年~2000年)さらなる発展へ「NIE全国大会」実施「日本新聞教育文化財団」設立「日本新聞博物館」開館・「NIE全国センター」開設、そして課題も
第3期(1996年~2000年)の考察
第1回NIE全国大会 1996年7月26・27日(東京都)
その後時系列に1996年~2000年の以下の資料を提示(番号は第2期からの続き)
(21)日本新聞協会「NIEニュース」第7号 1996年9月
(22)日本新聞協会「NIEニュース」第8号 1997年1月
(23)朝日新聞NIEガイドブック『新聞なるほど探検』1997年3月
(24)日本新聞協会「NIEニュース」第9号 1997年5月
第2回NIE全国大会 1997年7月31日・8月1日(広島市)
(25)日本新聞協会「NIEニュース」第10号 1997年9月
(26)日本新聞協会「NIEニュース」第11号 1998年1月
日本新聞協会が「日本新聞教育文化財団」を設立 1998年3月2日
(27)日本新聞教育文化財団「NIEニュース」第12号 1998年5月
第3回NIE全国大会1998年7月30・31日(仙台市)
(28)日本新聞教育文化財団「NIEニュース」第13号 1998年9月
(29)日本新聞教育文化財団「NIEニュース」第14号 1999年1月
(30)朝日新聞『総合的な学習にNIEを 先生たちへのガイダンス』1999年1月
(31)日本新聞教育文化財団『NIEガイドブック 小学校編』1999年3月
(32)毎日新聞『月刊ニュースがわかる 創刊号』小学生、中学生以上 1999年4月~
(33)日本新聞教育文化財団「NIEニュース」第15号 1999年5月
第4回NIE全国大会1999年7月29・30日(大阪市)
(34)日本新聞教育文化財団「NIEニュース」第16号 1999年8月
(35)日本新聞教育文化財団「NIEニュース」第17号 1999年11月
(36)日本新聞教育部文化財団「NIEニュース」第18号 2000年2月
(37)読売新聞『「総合的な学習」への新聞活用 パートナー』2000年4月
(38)読売新聞NIEガイド『新聞はともだち』全面改訂版、2000年4月
(39)日本新聞教育文化財団「NIEニュース」第19号 2000年5月
第5回NIE全国大会2000年7月27・28日(横浜市)
(40)日本新聞教育文化財団「NIEニュース」第20号 2000年8月
日本新聞博物館開館2000年10月12日(横浜市)
(41)日本新聞教育文化財団「NIEニュース」第21号 2000年11月
第3期の大きな動きについて、第1はNIE全国大会の実施です。
日本新聞協会「NIEニュース」第7号(1996年9月30日発行)では大会のようすを以下のように記述しています。
「第1回NIE全国大会(文部省後援)が7月26日、27日の両日、東京・内幸町の日本ピレスセンタービルで開かれました。参加したのは、全国のNIE実践者、NIEに関心の深い教育関係者と新聞界の代表ら256人(教育界から実践者98人を含め170人、新聞界から86人)。教師間の経験交流、教師と新聞関係者の情報交換が活発に繰り広げられました。
1日目は、プレスセンターホールで奥田幹生文相のあいさつが行われたほか、井上ひさし氏の講演、新聞・教育界の代表者が参加してのパネルディスカッション「報道・取材と教育の現場―NIE運動の可能性を求めて―」などが行われました。その後、各教科・領域別に分かれて、最近のNIE授業の展開方法をめぐって参加者が日ごろの経験や苦心を報告しながら率直に意見を出し合い、討論しました。各分科会では、「NIEで『子どもたちの生き抜く力』をはぐくむことができる」といった力強い報告が相次ぎました。夕刻からは、再びホールにおいて懇親会が開かれ、なごやかな雰囲気のなか、交流の輪が広がりました。
2日目は、分科会に引き続き、全体会議が行われ、大会の総括等を行いました。また、これと並行して新聞社のNIEコーディネーター、各都道府県の推進組織の代表者が集まり、「拡大コーディネーター会議」を開催し、新聞界として教育現場に対しどのようなサポートを行っていくか、などについて、討議しました。先生方へのアンケートでは、回答者の8割以上が「有意義だった」と高く評価され、第2回大会に「参加したい」と答えた先生は4割を超しました。」
NIEに関わっている教育界・新聞界が一堂に会しての大会でした。その準備は大変なことであったと思われます。2000年まで、東京・仙台・広島・大阪・横浜で開催され、2024年の京都まで29回開催されています。このNIE全国大会はNIEの一番大きな柱になっています。
第2は日本新聞教育文化財団設立(1998年3月2日)です。
日本新聞教育文化財団「NIEニュース」第12号(1998.5.31発行)では、財団について以下のように記述しています。
「財団法人日本新聞教育文化財団が、3月2日に発足した。言論・表現の自由の普及、社会性豊かな青少年の育成、新聞文化の発展と伝承を目的とする。財団は、NIE推進をはじめ、2000年秋、日刊新聞発祥の地「横浜市」にオープンする日本新聞博物館(愛称ニュースパーク)と新聞ライブラリーの開設準備と運営、新聞およびジャーナリズム全般に関する研究事業を行う。
従来、日本新聞協会が実施してきた事業を引き継ぐもので、同協会から財産の拠出を受けて発足した。
NIE推進活動では、日本新聞博物館に併設される「全国NIEセンター」の運営が大きな柱となる。全国の教育現場やNIE推進組織に必要な情報や関連資料を提供するなどして、地域のNIE活動を支援するほか、現場教師のためのワークショップを開催し、実践指導の研修を行うなど、運動の中核としての役割を担う。
ニュースパークでは、「歴史ゾーン」(時代とともに歩む新聞)「現代ゾーン」(新聞のできるまで)などの展示のほか、新聞の過去から未来までを一挙に駆けめぐるシアターや、新聞づくりにチャレンジできる「新聞制作工房」などが計画されている。一歩足を踏み入れれば、新聞のすべてが分かる仕組みになっている。
新聞ライブラリーでは、新聞協会加盟の日刊新聞の創刊号から最新号までの紙面情報を一堂に集め、無料で一般公開する。」
日本新聞協会の中に「財団法人 日本新聞教育文化財団」ができました。新たな教育財団ができることによりNIEへのさらなる可能性が開かれるとともに、直接新聞協会との協力的な関係に戸惑う教育関係者にとってはスムーズに実践に取り組みやすいということもありました。この日本新聞教育文化財団も2011年3月に廃止され日本新聞協会が合併しNIE事業を進めています。
第3は日本新聞博物館開館・NIE全国センター開設(2000年10月12日)です。
日本新聞教育文化財団「NIEニュース」第21号(2000年11月30日発行)では、日本新聞博物館・NIE全国センターについて以下のように記述しています。
「新聞のことなら何でもわかる-をキャッチフレーズに、10月12日、日本新聞博物館(ニュースパーク)が、日本の日刊新聞発祥の地・横浜市に開館、オープニングセレモニーが盛大に行われました。翌13日には一般公開が始まり、開館を待ち望んでいた人々でにぎわいました」。
「日本新聞教育文化財団は10月13日、日本新聞博物館の開館とあわせて、NIE全国センターを開設した。関連資料や多目的スペースを備え、全国のNIE活動の支援拠点としての役割を担っていく。」
日本新聞博物館開館とNIE全国センター開設は、日本のNIE進展に大きな役割を果たすと考えました。2000年は、1985年にNIEを提唱した日本の新聞界の15年間による総仕上げのように感じました。ここからは、この総仕上げをどのように維持・発展させていくことが課題と考えることもできます。
2000年、1985年に提唱したNIEの総仕上げのように感じたことにもいくつかの課題がありました。
普及して多くの方が参加するようになったNIEですが、実践を研究的に取り組むよりも実践すればいいという風潮が見られたことです。そして、その実践にはどのような先行研究があるのか把握する姿勢が弱いという風潮でした。
NIEを客観的に研究として捉える団体が存在しなかったのです。そのような団体ができないのかという思いが出てきました。
それまでにNIEに取り組んできた教育界や新聞界の方には、そのように感じていて方が結構多くいらっしゃいました。このように考える教育界・新聞界有志で2000年8月22日~23日、山梨県清里清泉寮で「日本NIE研究会」が設立されました。その後、20年間2019年まで定期的に「NIE清里フォーラム」が清里清泉寮で開催されました。初代会長は前日本新聞協会初代コーディネーターの妹尾彰氏に就任して頂きました。この会の趣旨を「NIEを積極的に推進し、NIEの理論と実践を真摯に学ぼうとする国内外の教育関係者、新聞関係者等の研究集会であり、日本新聞文化財団(日本新聞協会)および新聞各社が進めるNIE活動を積極的に支援するものである」と明確にしました。活動は①清里フォーラム ②国内交流 ③国際交流(日韓交流) ④出版 を4つの柱として、研鑽・親睦・交流を合言葉に、教師と研究者、新聞人の三者が共に研究を進めていくことにしました。
研究者として積極的に関わって下さったのが、横浜国立大学の影山清四郎教授でした。影山教授は「日本NIE研究会」が研究をスタートした5年後の2005年に設立された日本NIE学会の初代会長に就任されました。
「日本NIE研究会」の設立と活動について、以下のホームページを参照して下さい。
2001年以降、日本新聞教育文化財団(日本新聞協会)のNIEは順調に維持・発展できたのでしょうか。
日本新聞教育文化財団は2013年3月に廃止され日本新聞協会に併合されました。日本新聞博物館に併設されていたNIE全国センターもいつのまにか廃止されていました(この件については不明確で私も詳細は承知していません。推測になりますが、下山進著『2050年のメディア』(文藝春秋、2019年)にある第22章「疲弊する新聞」と関係があるのでしょうか)。
個人的なことですが、NIEに関して2000年設立の「日本NIE研究会」、2005年設立の「日本NIE学会」への活動が中心になり、2001年以降日本新聞教育文化財団(後に併合した日本新聞協会)のNIE活動にはあまり参加できなくなりました。ですから2001年から2024年までのNIEの実状が十分把握できていません。しかし、少なくとも全国紙がNIEへ積極的に関わっていかなくなったことは現在の全国紙のNIEホームページを見れば理解できます。このことは2020年以降そうなったように思います(不確かですが)。
今後、いつか「日本のNIE現状における風景を探る」というテーマで研究をしてみたいと思います。
今回で「日本のNIE原点における風景を探る-1985年~2000年日本新聞協会・新聞社の資料と私の執筆・発表資料から見えてきたもの-」は終了します。全50回の連載になりました。何かの参考になれば幸いです。
2025年1月から「NIEはNews in Educationに―紙でもデジタルでもニュースリテラシー・シチズンシップを育てる―」というようなテーマで連載していく予定です(予定は未定)。
私にとってこの分野は模索中です。デジタルの技術も未熟です。「70の手習い」です。「ニューセブンティ」(新しい70代)「幸齢者」(高齢者ではなく)の意識で頑張っていきます。